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あなたの課題ではありません

 僕の相棒は、警視庁捜査一課8係の「庵堂蘭子」という
女性である。

 最初に配属された時は、振り回されていたばかりの
自分だったが事件を一緒に追いかけるうち彼女の本質が
見えてきた。

 彼女は昔、誘拐された経験がありそれを僕に話してくれた
事実を弟さんは信頼の証だと僕に教えてくれた。

 そんなわけで、先日、全く別の事件で爆弾魔から救ってくれた
庵堂さんにお礼をするべく勇気を出して食事へ誘うことにした
青山。



「お先に失礼します」
「あ、あ~!待ってください庵堂さん、今日の夜あいてますか?」
「…どうしてです?」
「いや、あの…この間のお礼に食事でもどうかなぁ~って」



 別に、当然のことなので食事を奢られる理由にはなりませんと
予想通りの答えが返ってくる。

 いや、でも…それだけじゃなくていつもお世話になってるし…
一応パートナーですし!と食い下がった。

 あなたが何を考えてるのか分かりませんが…1時間だけならと
渋々OKを出してもらえることに。

 捜査一課の面々は、何事だ?と僕たちに視線を送ってきたので
足早に職場をあとにした。



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「嫌いな食べ物ってありますか?」



 結局、金曜日にも関わらずお店を予約してなかった青山は
庵堂の行きつけのカフェに行くことになってしまう。

 特にないですよと彼女の優しい言葉に、今日は好きなもの
たくさん食べてくださいとメニュー表を差し出した。

 あからさまに落ち込まないでください。それに、こういう
所があなたの長所でしょう?と初めて庵堂から褒められる。



「えっと…僕、そんな顔に出てました?」
「あなたの感情はすぐ顔に出るので見てて飽きません」



 職場では見たこともないような笑顔で微笑む蘭子に、青山は
自分の頬が赤くなるのを感じた。

 弟さんのことを彼氏だと勘違いした時から、僕が庵堂さんの
ことを意識しているのは自覚している。

 でも…きっと今の自分は彼女にとってはただの相棒でしかない。
男として好きになってもらうにはどうしたら…

 悶々と考えている青山を見ながら、蘭子はため息をついて
運ばれてきたサラダを口に運んだ。

 悩みでもあるんですか?としばらくして庵堂の方から予想外の
問いかけが投げられた。



「職場では言えないから今日、私を誘ったのでは?」
「…いや、違いますよ!本当に…庵堂さんと食事したかっただけなんです。
 すみません…」
「……あなたはすぐ謝りますね」



 青山は、怒っているわけでもなく楽しそうに話す蘭子の姿に
意を決して申し出る。

 庵堂さん…僕じゃ頼りないかもしれませんがご家族のこと…
悩みがあったら少しでも打ち明けてもらえませんか?と丁寧な
言葉で静かに吐き出した。

 ありがたい申し出ですが前にも言った通り、それはあなたの
課題ではありませんとキッパリ断る蘭子。

 それに…事情を知っているのならこれ以上深入りすると父の
ようにあなたも傷付きますと告げられた。

 僕は、あなたを守れるような男になりたいです…相棒とか…
パートナーとかではなくて…と真っ赤になりながら自分に想いを
伝えてくれようとしている彼を私はじっと見つめた。

 分かっている…あなたが言いたいことも、本当に心配してくれて
いるのだということも…




(逃げていたのは…私の方…)




 蘭子はこんなにも踏み込んで来てくれた彼に感謝しながらもう1度
青山に先程の言葉を突き付ける。



「それは…あなたの課題ではありません」
「…そうです…か」
「……それは……」
「……?」
「…あなたと私の課題…かもしれませんね」



 え?と顔を上げた青山と視線を合わせることなく彼女は足早に
お店をあとにする。

 ちょっと、待ってくださいよ庵堂さん!!と後ろからいつもの
ように聞こえる声を心地よいと感じながら。




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