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君と生きる

 俺が初めて赤井秀一に出会ったのは、組織時代の5年前まで
遡る。

 今から思えば、NOCに所属していた全員が揃ってコンビを
組まされていたのは偶然ではなかったのかもしれない。

 それに、どんな相手にもポーカーフェイスの姿勢を貫いてきた
降谷にとって奴は始めから特別な存在だった。

 スコッチの死をきっかけに均衡に保たれていた関係は、脆くも
崩れ去ってしまったが今でもよく思い出す。



「アイツとお前は似ているよ」



 ライとやりあった後のスコッチの口癖がこの言葉だった…
あぁ、確かに似ているな…

 紆余曲折を経て赤井と恋人になったものの、簡単に素直に
なれる性格ではない俺はいつも反省するばかり。

 5歳も年上で恋愛経験も豊富なFBIにひよっ子の自分が
適うはずもなくついいきり立ってしまう。

 実際、己の力を自負しているわけではなかったが赤井秀一と
肩を並べられるのは俺だけだと思っていた。

 死んだと聞かされた時も、憎しみより先に共に戦った同志と
呼べる仲間が再び自分の前から消えたことの悲しみを久しぶりに
味わい、さらに彼自身を憎んだ。

 そんな彼の態度が微妙に変化したのはスコッチが死んでから
だった。

 組織時代に不本意な人殺しをさせられた日の夜、落ち込んでいた
自分を慰めてくれたのは他ならぬ彼であり、おそらく当時バーボンと
名乗っていた俺のこともNOCではないかと薄々気付いていたから
なのだろう。

 実際に俺は救われていた…ライという存在に。赤井秀一という
憎き相手に。

 もう何度目かになろうとしていたこの季節が巡って来るといつも
センチメンタルな気持ちになる。

 3徹目でようやく自宅に戻った降谷は、アメリカから1日早く
帰国していた赤井の気配も分からずそのまま倒れ込んだ。










「零、ここで寝るな。風邪ひくぞ」
「う~ん…」
「風呂も準備してある。少しでも身体を温めた方が良い」
「……分かってますよライ……」



 そう零してしまった自分に驚き、慌てて取り繕ったが目の前の
赤井はこれまた懐かしい名前で呼んでくれたなと笑っている。

 わずかに頬を染めた降谷は、お風呂入ってきますね!と慌てて
浴室へと走り出す。

 ライと呼んだのは何年ぶりだろうか…零は自分の心臓が飛び出し
そうなほど鼓動が早いことに動揺した。

 くっくっとBGMのように聞き慣れた声をドア越しに聞きながら
温かい湯船にしばらく浸かったあと急いでキッチンへと戻る。

 いつものようにバーボンを嗜みながら、つまみを食べている赤井の
視線の先にはホットミルクが置かれていた。

 今日は至れり尽くせりだな…と降谷は心の中でありがたく思いながら
いただきますと遠慮なく準備されたドリンクを飲み干す。

 まだ飲むか?と聞いてきた赤井に大丈夫です。と返事をした自分は
彼が帰国する前から計画していたことを実行するべく本題に入った。



「赤井、明日なんですけど何か予定ありますか?」
「いや?特にない。君と家でゆっくりしようと思っていたが…」
「一緒に行きたいところがあるんです」



 一瞬だけ恋人の表情が止まったのを降谷は見逃さなかったが
彼はすぐにいつもの優しい表情を浮かべる。

 赤井は黙って了解したとだけ言うと、そのまま俺を抱きしめて
眠りについた。

 どこに連れて行ってくれるのか、何時に出発するのかなど赤井は
それ以上細かいことは何も聞いてこない。

 降谷は別に隠すつもりなどなく、彼に問われたら行き先をすぐに
答えるつもりだったのに。

 きっと彼も気付いているのだろう…明日は、俺たちが組織時代に
コンビを組んでいたスコッチの命日だということを。



********************************************



「ふぁ…おはようございます、赤井」
「おはよう、零くん」



 徹夜続きで疲労がたまっていた自分を気遣ってくれたのか、朝食は
赤井が全て準備してくれていた。

 少し焦げたハムエッグ、冷蔵庫に買い置きしていたクロワッサンと
大好きなカフェオレがお気に入りのマグカップに注がれている。

 あなた、いつの間に料理がこんな上手になったんですか?と照れて
いることを悟られたくない自分はぶっきらぼうに言い放つ。

 離れている間、君の料理が食べられないから少しずつ自分で作る
ようになったんだと赤井は答えた。

 また歯の浮くようなセリフを…と頬を染めながらぶつぶつ言っている
彼のリアクションを楽しみながら新聞を読み始める赤井。



「1時間後に駅前のカフェに迎えに来てください」
「一緒に出ないのか?」
「はい、ちょっと寄るところがあるので」



 そう笑いかけた零はいつものラフな格好で、またあとで!と足早に
財布だけを持って出て行った。

 赤井は彼の意図を読み込めず、戸惑っていた。おそらく彼の指定
する場所はあそこに違いない。

 しかし…自分自身の予想が当たっているのだとしたら降谷が一緒に
行こうと誘ってくれた真意が分からない。

 零が俺を恨んでいないことはもう分かっている。ただ、そのことと
今回の目的地は領域が違う気がした。

 それは自分にも言えることで、踏み込んではいけない聖域のように
捉えていた赤井。

 約束通り、1時間後にカフェへ迎えに行った俺は彼が片手に持っている
ウィスキーの瓶を見て確信する。



「赤井、察しの良いあなたならもう分かるでしょう?運転は僕がします」
「……あぁ、よろしく頼む」



 高速を2時間ほど走らせた先に、彼のお墓は存在していた。零が
言うには一部の人間しかこの場所は知らないらしい。

 俺に伝えてもよかったのかと尋ねると、あなたは特別でしょう?
と振り返って微笑んだ。

 赤井、スコッチが死んでからの2年間本当にすみませんでした…
彼は改めて深々と頭を下げた。

 やめてくれ、君にそんなことをしてほしくてここに来たわけじゃない
と自分が言うと分かっていますと即答で返される。



「赤井…お前は俺がNOCだと半分気付いてたんだろ?」
「……確証はなかったがな」



 苦笑いをしながら花を手向ける姿に、あぁ…やっぱりスコッチの
言っていた通り俺と赤井は似ていると思った。

 それ…僕を迎えに来る前に買ったんですねと話しかけると、俺も
彼の命日を忘れるわけがないと静かに吐き出す赤井。

 揺るがない正義感、曲げられない信念、何一つ交わることのない
俺たちが運命のいたずらのように出会ってしまったあの日。

 あの部屋で過ごした2年間は、すでに降谷の中で何物にも代えがたい
大切な瞬間へと変貌している。

 憎からず組織時代の時も大事には思っていたが、強く意識する様に
なったのはやはり死んでからだなと赤井は答えた。

 あの頃の君は、己の命などいつ無くなっても構わないほど「生」に
関して無頓着だったと振り返るように言葉を紡いでいく。

 静かに聞き終えた降谷は、今は死ねない理由が出来てしまったからと
自分に向かってはっきりとそう告げた。



「俺は、今まで仲間の死を何度も見送ってきました…だけど…お前だけは
 諦められなかった。お前だけは死ぬはずがないって思いたかった…」
「…不謹慎だが、君のその行動は本当に嬉しかったよ…死んでもなお俺を
 追いかけてくれる君に惹かれた」



 スコッチに言われたことがあるんです、俺と赤井は似ていると…
あの時は到底そんな風には受け止められなかったけど、今なら
分かる気がしますと降谷は笑う。

 ここまで来るにはお互い余りにも失ったものが大きすぎた…それは
赤井も俺も自覚している。



「スコッチのことは忘れない…もちろんあなたが愛した明美さんのこともです」
「零…」
「いつか彼女のお墓にも僕を連れて行ってください」
「……君は本当に男前だな」



 当たり前だろFBI、俺を誰だと思ってる。と嚙みつくとそういう
所がたまらなく好きだと惚けられた。

 またそういうアメリカ人的なことを堂々と言って…朝と同じく頬を
染める彼はどうやら率直な愛の言葉が苦手なようだ。

 君とならどこへでも飛んでいけそうだと赤井は嬉しそうに大声で
空に叫ぶ。

 はい、あなたと生きていく覚悟がようやく出来ました!と自分も
仲間たちに届くよう大空へ叫んだ。



*************************************************



 スコッチのお墓参りを終えて自宅に帰るまでの間、赤井は終始
無言のままだった。

 せめて近くのコンビニで夕食を買いませんか?と提案したが
君の手料理が食べたいとやんわり断られる。

 でもあんまり食材ありませんでしたからスーパーに寄ってくれ
とお願いしたがその我が儘も却下された。

 車を降りた赤井はやはり無言で、連れていくべきじゃなかった
のかなと後悔する降谷。

 ポストの郵便物を確認し、部屋の扉を開けて靴を脱ごうとした
瞬間、後ろから思いきり抱きしめられる。



「ちょっと、待っ…んぅ、ふ…」
「待てない。今すぐ君が欲しい」



 自宅に帰るや否や、玄関先で口唇を塞がれた降谷は軽く抵抗
したものの赤井は一向に止める気配がない。

 ただの性欲処理と違って愛しいという感情が混じると、人間は
こんなにも緊張し恥ずかしくなることをこの年で初めて思い知った。

 遠距離恋愛が続いていたため、以前体を重ねたのは指折り数えて
もう3カ月以上も前のことだ。

 コイツの触れる手は優しい…身体の負担を考えての事もあるが
その温もりは目に見えない愛情で溢れていた。

 待って赤井と懇願しても、待てない。昨日も死ぬほど抱きたかった
のにお預けを食らったんだと拗ねられるはめに。

 それに君から俺と生きていく覚悟が出来たなんて聞かされたら
抑えられないと耳元で囁かれる。

 身体を抱きかかえて寝室に向かう間も、赤井の口付けは一向に
止まらず弱い耳を中心に攻められ意識が飛びそうになった。



「あ…かい…」
「……ん?」
「すき…好きです…」



 どうしたんだ急に…照れるだろう?と赤井は本当に驚いたのか
目を丸くしている。

 ゆっくりとベッドに倒されると、2人分の体重がかかったせいで
部屋の中は軋む音だけが響いた。

 俺だってたまには素直になりたい時もあるんですよ…と視線を
逸らして黙り込む。

 スコッチや仲間たちに報告したせいか、いつもより体が火照って
緊張し身体が震える降谷。

 そんなに煽らないでくれ、本当に優しく出来なくなる。赤井は
静かに髪をかき上げて俺の頬に触れた。



「零…本当に俺で良いのか?」
「今さらですよ…あなたじゃないと僕の生きる意味がない」
「…今日はいつもより優しくするよ」



 そう囁いた赤井に、降谷は身体を密着させて「良い…優しくしなくて
良いから…むちゃくちゃにして…」と小声で告げる。

 君は本当に初心なくせして煽るのが上手いな…と大きくため息を
吐かれた。

 明かりを消そうと手を伸ばした降谷の手に自分の指を絡め、君の
顔を見ながら抱きたいとはっきり告げる。

 コートにYシャツ、1枚ずつ丁寧に脱がしていくたび甘い声が漏れ
恥ずかしいのかまだ悪あがきのように抵抗を見せた。

 俺ばっかり脱いでお前も脱げ!と怒鳴られた赤井は、それもそうだな
とTシャツを一気に脱ぎ捨てる。

 鍛えられた筋肉と均整の取れた赤井の裸体は、いつまで経っても
見慣ることはない。



「観念しろ、零」
「んふ…あっ、ん…待っ…」
「君の身体も声も、全部抱きたい」



 早く自分の物を挿れたいはずなのに、ほぐれるまで時間をかける
赤井の執拗な愛撫が続く。

 痺れを切らした降谷は、もうっ、いいから入れろと小さな声で
呟くとやっと求めてくれたかと微笑んだ。

 指を引き抜き、例の物を机の引き出しから取り出した赤井だが
要らないと彼に制止された。

 今日はお前を近くで感じたい…息を吐きながら色っぽく誘う零の
言葉に耐え切れず自身の熱くたぎった男の本能を突き立てる。

 やぁ…と真っ赤に顔を染め上げる彼の乱れた姿をもっと堪能したくて
さらに律動を早める赤井。

 何か言おうとした彼の口を咄嗟に塞ぎ、足を持ち上げてさらに激しく
打ち付けた。



「あぁっ、あん…あか、い…あ!やぁっ」
「はっ…っ、零」



 いつの間にこんなに好きになったんだろう…この男の存在がいつだって
俺を強くする。

 スコッチ…ごめんな、ありがとう…お前のことは決して忘れない…ただ
俺はコイツと…赤井秀一とずっと生きていきたいんだ…











「ん…」
「目が覚めたか?」
「腰が痛い…」
「……君が煽るからだ」



 少しも悪びれた様子のない赤井は、至極愛しそうに俺の髪の毛を
触っている。

 すまない、今日は優しくしたかったんだが…あんな風におねだり
されたら我慢できるわけないだろうと困ったように囁かれた。

 う、も…もう良いですと自分が煽っておいて照れまくる恋人の
可愛さはどうにかならないものか。

 後ろからそっと降谷を抱きしめた赤井は、君の過去も未来も全て
俺が貰っていいか?と質問した。



「……プロポーズみたいなことは言うな」
「……プロポーズのつもりだが」
「お前ってやつは…」
「今の言葉で反応したのか?可愛いな」



 全身を赤く染め上げ、言葉を失う恋人の足に再び自分の足を滑り
込ませる。

 ちょ、っと、まだする気なのか!?と身体をよじらせる彼に
お望み通りもう1度だけイカせてやると強引にキスをした。




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